1986年にリリースされた映画『天空の城ラピュタ』主題歌「君をのせて」のカバー曲の制作メモページです。
楽曲アレンジはピアノを基軸にドラマティックな展開を意識して、90年代前半のバンドサウンドに、現代のフィーリングを少し追加するという形で仕上げています。
<2020年 追記>
2020年12月18日にスタジオジブリから『天空の城ラピュタ』の場面写真が提供されましたので、動画のサムネイル画像をジブリ提供のものに変更しました。
尚、このページに記載しているDAWソフトやプラグインをはじめとするツールは2016年に記載したものです。ほぼ、現在の音楽制作では個人的に使用していません。
楽曲名:君をのせて/井上あずみ(1986年)
アーティスト:KSTY feat.Lily
作曲:宮崎駿
作詞:久石譲
プロデュース:KSTY
公開日:2016年08月14日
YouTube:https://youtu.be/y_-Qk2a4YmM
君をのせて – アレンジ&トラック制作 – エピソード1
CUBASEとVOCALOIDの操作を覚える
カバー曲「君をのせて」のアレンジ&トラック制作は、すべて「CUBASE」のほうで行いました。メインで使用した音源は、IK Multimedia「SampleTank3」です。
今回の制作の大きな目的はDAWソフト「CUBASE」の使い方を覚えることと、はじめてVOCALOIDを使うので、「VOCALOID Editor」を使用して人間っぽく歌わせることです。
実は2015年の12月には「君をのせて」のアレンジもトラック制作も終了していたので、2016年時点であまり覚えていないところもあるのですが、覚えている範囲で書きたいと思います。
楽曲アレンジの方向
アレンジのリファレンスにした曲はないですが、「君をのせて」はピアノ中心でバンドサウンドにしようというのは、はじめから決めていました。
年を取った人間が少年時代を俯瞰する形の楽曲アレンジという方向性もありでしたが、アレンジのイメージは「アグレッシブ」をテーマにしたバンドサウンドです。
イントロダクションでも書きましたが、当時小学1年生の息子が聴いても何か感じてもらえたらという気持ちもあり、歌詞中の「いつかきっと出会う ぼくらをのせて」も意識してアレンジしました。
特にアレンジで重視したのはBメロの「さあ でかけよう ひときれのパン〜」で開放感を出すことです。
ピアノのイントロから、はじめて使うVOCALOID Lilyも手伝い、妙な重々しい緊張感があったので、Bメロで開放感を出しことを意識しました。
また、歌詞中の「いつかきっと出会う ぼくらをのせて」も意識してアレンジしました。
アレンジ自体は4〜5時間
VOCALOIDのデータ入力&編集と音の差し替え時間を含めないと、アレンジ自体は4〜5時間くらいで終わったと思います。
やはり、一番時間が掛かったのは、メインボーカルとコーラスパートのVOCALOIDのデータ入力&編集です。普通に入力するだけだと音が壊れるところもあったので、やはりそういうところが時間が掛かりました。
君をのせて – ミックスダウン作業1
マルチトラックをSONARに読み込む
カバー曲「君をのせて」のトラック制作は「CUBASE」のほうで行いましたが、ミックスダウンは、せっかくアップグレードしたので「SONAR Platinum」のほうで行いました。
手間がかかりましたが「CUBASE」で、一度、書き出した各トラックを「SONAR Platinum」のほうに読み込みました。
尚、VOCALOID(ボーカロイド)だけは、メインボーカル、コーラストラックを含めて全トラックRewire接続で「SONAR Platinum」に直接録音しています。
モニタースピーカーとイヤホンでのミックス
実はミックスダウンはスタジオモニター・スピーカーと、かなり危険であることは100も承知で、昨年購入した「iPod Touch 第6世代」に付属していたイヤホンで行いました。
もちろんヘッドホンは使用すれば確実にクオリティーはアップしますが、ヘッドホンを使用すると、どうしても細部が気になり、時間的に厳しくなります。
そのような理由から「君をのせて」のミックス作業はモニタースピーカーとイヤホンでミックスを行いました。
簡単に全体のバランス調整
「イヤホンでミックスなんてありえない」という人が大多数だと思いますが、「君をのせて」の全体のバランス調整やコンプやEQ処理についても書いておきます。
まず、サビの部分だけをループ再生して、センターに位置するボーカル、キック、スネアドラムの音を出しコンプとEQを使い音量のバランスを取ってゆきました。
VOCALOID Lilyのソースマイクは分からなかったのですが、コンプとEQ前にキャンペーンで買った、画像のT-RackSのマイクロフォン・モデリング・ツール「Mic Room」をインサートして、ボーカルが良い感じになるように設定しました。
次にトラック主要楽器のドラム、ピアノ、ギター、ハモリなど、コンプとEQ処理をはじめ、メインボーカルとのバランスを取りました。
多分、最終ミックスでは聴こえないと思いますが、この段階で左右のギターはディレイで逆チャンネルに、それぞれ振っています。
他のトラックも、あくまでもメインボーカルとのバランスを考えて調整しました。
ここまでがスタジオモニター・スピーカーで行った大体1時間くらいの作業で、ボリュームデータは書いていません。
君をのせて – ミックスダウン作業2
使用したエフェクター
今回の「君をのせて」のミックスに使用したプラグイン・エフェクトはコンプもEQも、ほとんどは「SONAR Platinum」のチャンネル・ストリップ「ProChannel」と、標準搭載のプラグイン・エフェクトを使用しています。
サードパーティー製のプラグインで使用したのはギタートラックに「AmpliTube3」、ボーカルトラックに、前回記述したマイクロフォン・モデリング・ツール「Mic Room」くらいです。
もう一つ、ボーカル用のリバーブにIK Multimedia「CSR (Classik Studio Reverb)」を使用しました。
エレキギターは「左チャンネル」「右チャンネル」「間奏のソロ」の3チャンネルあるのですが、すべてに「AmpliTube3」を使用してサウンドメイクしています。
サードパーティー製のプラグイン・エフェクトだけ見ると、かなり少なく感じるかもしれませんが、「ProChannel」は全トラックに立ち上げています。
ボーカルのトラック処理
はじめてVOCALOIDを使用したこともあり、人間っぽく歌わせることと同時に、人間っぽく聞かせることにこだわりトラック処理をしました。
以下に簡単にトラック処理について書いておきますが、VOCALOIDは時間があれば、さらに突き詰めて行けそうだと思いました。
まずメイン・ボーカルにはSONARの「VX-64 Vocal Strip」で軽くザラザラ感を出すエフェクト処理をしてからボリュームデータを書いています。
VOCALOIDの可能性を知りたいことあり、2度目のサビの後やエンディングは、あえてアレンジでピアノとボーカルをメインに音を薄くした箇所があります。
そこでクラックノイズがきになる箇所がいくつかあったので、クラックノイズ除去もボリュームデータでオートメーション処理しています。
次に画像上のVOCAL2はVOCAL1をコピーして標準搭載されているピッチシフターで少しずらしたものです。聴覚上は分かりにくいかもしれませんが、一応、ダブルトラックになっています。
最後に300〜400Hzにボーカルとベースと被る帯域があったので、その帯域のベースはカット、ボーカルはブーストしています。
ミックスに関しては書ききれませんが、ボーカルトラックは、はじめてVOCALOIDを使用したことを考えると、なかなかの仕上がりがりだと思います。
君をのせて – マスタリング作業
マスタリング時のEQとリミッター
本来は2ミックスを書きだした後に、マスタリング作業をしますが、あえて書き出さずにミックスのマスターフェーダーにT-RacksのEQ「Linear Phase Equalizer」とリミッター「Stealth Limiter」の順にインサートして音を調整して終了です。
ミックスの段階で、トータルコンプで大体の質感調整は行っていますので、「Linear Phase Equalizer」は「Stealth Limiter」との兼ね合いで、簡単に削る程度にEQ処理をしました。
分かりやすく簡単に説明すると「Stealth Limiter」で音圧アップした際に気になった帯域を「Linear Phase Equalizer」で削るという作業です。
過度な圧縮をせずにラウドネス感を出せるが魅力の「Stealth Limiter」ですが、ミックスのイメージ保つのであれば、やはりEQ処理は必要になってきます。
RMSとStealth Limiter
RMSは上の「Stealth Limiter」の画像だと「- 6.8」になっていますが、「君をのせて」のサビのRMSは「- 8.0 〜 – 9.0」くらいに最終的に調整しています。
ここで使用したIK Multimediaの「Stealth Limiter」は2015年12月のセールで半額で購入したのですが、RMS -6.8の状況でも歪みも大きな音の変化もなかったです。
まだ2015年08月にリリースされたばかりなのでメジャーではないマスタリング・プラグインで、音圧レースはすでに終わっていますが、もしかすると、かなりお得な買い物だったかもしれないと思っています。
CPUの占有率が高めですので、やはり、しっかりとした作業をする場合はミックスファイルを書きだした後にマスタリング作業をしたほうが良いと思います。
軽く再調整して完了
一度「君をのせて」の2ミックスを書きだした後に、再度、シーケンサー音、右チャンネルのエレキギターとパンの調整を軽くしました。
また音圧上げでボーカルのクラックノイズで気になったところがあったので、ボーカルのクラックノイズの除去をボリュームデータの書き込みで行いました。
このような感じの作業の後に、16bit、44.1kHzで書き出して「君をのせて」のマスターファイルが出来上がりました。
尚、公開している「君をのせて」の動画の音質は、一度、mp3してからMacの「iMovie」に読み込んだものです。
君をのせて – 動画作成
iMovieを使用
Youtubeに「君をのせて」のカバー曲をアップするために、慣れていないというより、ほとんど作ったことのない動画を作成することにしました。
音楽のほうはトラック制作からミックス、マスタリング作業までをWindowsで行いましたが、「君をのせて」のムービー制作のほうはMacの「iMovie」を使用することにしました。
昨年、Sony Creative Softwareの「Movie Studio 13 Platinum」をキャンペーン価格で購入したのですが「使い方を覚えるのが面倒そう」というのと「ムービー制作にあまり時間を掛けられない」というのが理由で「iMovie」を使用することにしました。
そうは言っても実は「iMovie」を使用するのは数年ぶりで、かなり操作に戸惑いました。
素材を追加すると歌詞の字幕がずれる
やり方が良くないのは分かっていますが、「君をのせて」の音源を読み込んだ後に、音楽に合わせて先に歌詞をすべて入力したのですが、その後に画像素材を入れてゆくと歌詞の字幕が何度も音楽とずれました。
そうこうしているうちに、トータルでムービー作成に4時間くらいかかりました。文字入力は最後にするべきだったと後悔しています。
地球ばっかり出てくる動画
とりあえず「君をのせて」のムービーは完成しましたが、4時間かけてこのレベルの動画だと思うと結構悲しいです。(音楽制作とは違い疲れた)
また、ある程度、映像でもスケール感を出したかったとはいえ「映像に地球ばっかり出てくるのは如何なものか・・・」と自分でツッコミを入れたくなります。
先に映像があったら、曲のほうも全然違う編曲になっていたかなと思うと同時に、せっかくなので「Movie Studio 13 Platinum」の使い方を覚えようかなと思っています。
記事更新日:2020年12月25日 by KSTY