破壊 2022年版 – 視聴メモ(作品評価 A)

9.2

映画「破壊 2022年」 画像01
島崎藤村の名作を間宮祥太朗さん主演で60年ぶりに映画化した2022年公開の「破壊」を視聴しました。

1948年に木下恵介監督、1962年に市川崑監督の名だたる巨匠で過去2回映画化されていますが過去作の「破壊」は視聴していません。

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破壊のストーリー&主要キャスト

映画のストーリー

<映画のキャッチコピー>
この戒めを破り
明日を生きる –

明治後期、瀬川丑松(せがわうしまつ)は自分が被差別部落出身ということを隠して、地元を離れてある小学校の教員として奉職する。

被差別部落出身ということを隠し通すように亡くなった父からの強い戒めを受けていた丑松は生徒に慕われる良い教師だったが自身の生い立ちを隠していることに悩んでいた。

差別の現状を体験することで心を乱しつつも、下宿先の士族出身の女性・志保との恋に心を焦がしていた。

友人の同僚教師・銀之助の支えはあったが、学校では丑松の被差別部落出身についての疑念も抱かれ始めて立場は危ういものになって行く。

苦しみのなか丑松は被差別部落出身の思想家・猪子蓮太郎(いのこれんたろう)に傾倒していく。

猪子宛に手紙を書いたところ、思いがけず猪子と対面する機会を得るが、丑松は猪子にすら、自分の生い立ちを告白することができなかった。

そんな中で猪子の演説会が開かれ「人間はみな等しく尊厳をもつものだ」という彼の言葉に強い感動を覚える。

しかし演説後に政敵の放った暴漢に襲われ猪子は死亡してしまう。

この事件がきっかけとなり、丑松はある決意を胸に教え子たちが待つ最後の教壇へ立つ。

主要キャスト

映画「破壊 2022年」 画像02

画像出典:「破壊 オフィシャルサイト」


2022年公開の映画「破壊」の主人公の瀬川丑松役は間宮祥太朗さん、ヒロインとなる下宿先の士族出身の女性の志保役は石井杏奈さんです。

脇を固めるのは丑松さんの友人に矢本悠馬さんや蓮華寺の住職に竹中直人さんをはじめ、高橋和也さん、小林綾子さんなど実力派揃いです。

間宮祥太朗さんの出演する映画を観たのは「破壊」がはじめてです。ドラマだと波瑠さんが主演の「魔法のリノベ」(2022年)で、バツ2のシングルファザーを演じていた間宮さんが印象に残っています。

また「3年B組金八先生ファイナル」(2011年)に出演していたようですが、どの役で出演していたのかの記憶がないです。

石井杏奈さんの出演作だと主演を務めた「ガールズ・ステップ」(2015年) と、実写映画「四月は君の嘘」(2016)で主人公の幼馴染の澤部椿役が記憶に残っています。

<作品データ>
タイトル:破戒
公開:2022年
時間:119 分
原作:島崎藤村「破壊」
監督:前田和男
脚本:加藤正人, 木田紀生
出演:間宮祥太朗, 石井杏奈, 矢本悠馬, 高橋和也, 小林綾子, 竹中直人
視聴日:2025年04月06日
作品評価:A

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破壊の感想 – 作品評価 A

昔ながらの良質な日本映画

映画「破壊 2022年」 画像03

画像出典:「破壊 オフィシャルサイト」


あまり過剰な期待を持たずに「破壊」を視聴しましたが、しっかりとしたメッセージもあり、非常に優れた作品でした。

島崎藤村の文学作品が原作ということもあり、エンタメ性みたいなものはありませんが、映像も美しく久々に昔ながらの良質な日本映画を観た気がしました。

丑松(間宮祥太朗)は志保(石井杏奈)とラストで一緒に生きて行くこととなりますが恋愛ドラマよりも教師ドラマとしての印象のほうが強かったです。

教師ドラマとして胸打つものがある

ちょうどこの「破壊」のレビューを書いているときに高知県の令和7年度小学教員採用(6年度実施)「小学教員合格者280人中204人辞退」というかなり衝撃的な記事を見ました。

何とか人員の確保はできているみたいですが、教師の勤務実態はかなりブラックのイメージがあるので、これは仕方ないのかな?と思ったりもします。

映画「破壊」の丑松は父親からの「被差別部落出身ということを隠して生きろ」という戒めから志保に対してだけでなく生徒たちに対しても後ろめたさを感じて生きています。

同様の境遇で生きてきた、差別と戦っている猪子蓮太郎を尊敬しながらも、父親からの戒めが丑松をずっと苦しめます。

それでも丑松先生はずっと生徒思いで、生徒にも慕われる素晴らしい先生で、最後の授業で自身が被差別部落出身を告白するシーンは教師ドラマとして胸打つものがありました。

きっと教師を目指す人は誰もが先生としての丑松に憧れるのではないかと思いますが、最近は保護者の対応も大変みたいですし、そんな簡単な問題ではないのでしょうね。

主人公の境遇が生きた言葉につながっている

主人公の丑松の境遇が生徒に対する生きた言葉につながっているのが、個人的にポイントが非常に高かったです。

以下の二つは映画のなかで印象に残った丑松の生徒への言葉です。

省吾さん、耐えるんです。歯を食いしばって耐えるんです。
決してくじけてはいけません。

どんなに苦しい境遇に陥っても、しっかりと学問を身に付けていれば必ず這い上がれます。

勉強が君たちを救ってくれるのです。そのことを忘れず一生懸命勉強して下さい。絶対に勉強から逃げないで下さい。

だから先生も逃げません

丑松の「決してくじけてはいけません。」や「必ず這い上がれます。」などの言葉は、ロック的な考えで、苦しんできた人間が言っている綺麗事ではない言葉なので説得力が違います。

令和時代だと薄れつつある「古い」考えなのかもしれませんが、この感覚をなくしたときに成長は止まり、人生は終わりな気がしてなりません。

また、学ぶ力は考える力、そして道を切り開く力に直結していますので「学問を身に付けていれば必ず這い上がれる」という丑松の言葉は非常にこの時代でも重要です。

人間にとって大切なことは大して変わらない

SNSで「令和時代に~だ」みたいな書き込みをよく目にしますが、すでにそれって差別発言じゃないの?と感じます。

自分を利口に見せたいみたいですが、それすら気づかないの人は意識を高める前に、もう少し本を読んだりして知識を深めたほうがよさそうです。

また意識高めるのは結構ですが、自意識高めてるだけのことに気づかなければ、差別していることにすら気づかない、ただの痛い人になってしまいます。(すでになっている人も多いです。)

人間にとって大切なことに古いも新しいもなく、令和も、平成も、昭和も、明治も大して変わらないと、2022年版の映画「破壊」を視聴してそう感じました。

映画「破壊」を視聴する前は、丑松と志保との恋愛要素が強いのかな?と思っていました。

しかし、そうではなく、これからの時代を生きてゆく世代へのメッセージ要素が強かったです。

学ぶ力は考える力、そして道を切り開く力に直結していますので「学問を身に付けていれば必ず這い上がれる」という丑松の言葉は非常にこの時代でも重要です。

映画「破壊 2022年版」(2022年)はAmazonプライム・ビデオで視聴することができます。この記事を書いている時点ではプライム会員の無料特典となっていました。

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記事公開日:2025年04月07日 by KSTY