YouTubeは、2023年8月21日に、音楽へのAI活用のための基本的な原則である「AI Music Principles」を制定しました。
あくまでもYouTubeの示した原則ですが、現在の音楽市場の中心のひとつでもあるYouTubeの制定したAI音楽の原則ですので、音楽クリエイターは、後々、混乱しないように知っておいたほうがよいと思います。
YouTube AI Music Principles
YouTubeから提示されたAI音楽への3つの考え方
YouTubeから提示された音楽AIの考え方は以下の3つとなります。世界で問題となっているグレーゾーンであったり、権利侵害などのAIと著作権の課題に関しても考え抜かれている感じはします。
原則2(Principle #2):AIはクリエイティブな表現の新時代を切り開こうとしているが、適切な保護を盛り込み、参加を決めた音楽パートナーにチャンスを与えなければならない。
原則3(Principle #3):私たちは業界をリードする信頼と安全の組織とコンテンツ・ポリシーを構築してきた。私たちは、それらをAIの課題に対応できるよう拡張してゆく。
権利保護や収益に関すること
ドレイクとザ・ウィークエンドの声を無断で使ったAI生成のフェイク曲がヒットして問題になりましたが、原則2の「適切な保護を盛り込み、参加を決めた音楽パートナーにチャンスを与えなければならない。」は、そのあたりに絡んでくるものだと思われます。
ただ、AI音楽の以前の問題で、YouTube上には、音楽の著作権を持っていない人間が、メジャーアーティストの過去のテレビ映像や、ライブ映像を無断でアップしています。
それも数人とか数本とかの単位ではなくて、明らかに著作権違反に該当する動画が大量にアップされています。
何年も削除されていないまま残っている違反動画も、数多く確認することができます。
YouTubeはJASRACと提携しているので、アップしても問題ないと勝手に思っている人も多いのではないかと思います。
あくまでも許可されているのは自分で演奏したカバー曲のはずですが、その認知の徹底を怠っている気がします。
YouTubeの著作権管理テクノロジーであるContent IDは、かなり優れていますが、「権利所有者を完璧に保護することができるか?」と聞かれたなら、それは難しいレベルです。
収益の50%で折り合いがつくと予想
AI生成者とアーティスト(権利者)で、収益の50%で折り合いがつくと予想していますが、アーティスト主導ならAI利用NGの人も必ず出てきます。
音楽は人気商売ですので、AI音楽が不利益になるアーティストと、利益になりチャンスとなるアーティストとが存在します。
ドレイクやザ・ウィークエンドのような売れているアーティストなどは、例えば音声生成AI「RVC(Retrieval-based Voice Changer)」を使用して、まるで歌声合成技術のボーカロイドのような感覚で、曲を量産されてしまうと、本人たちが今後発表してゆくオリジナル曲の価値が下がってしまう可能性は否定できません。
一方、一発屋や過去の人となったアーティストには、再認識や再チャンスが生まれる可能性が出てきます。何もせずに収益も50%が入ってきますので悪い話ではないと思います。
AIの存在を無視することは無理
音楽の世界にもAIの波が来ている
日本でも少し揉めていますが、イラストであったり、脚本家やコピーライターなど文章で生きる人はAIにより脅かされ、世界を見渡すと訴訟問題になっていたりします。
音楽制作の世界には「DTM」「DAW」という言葉がありますが、常にテクノロジーの進化とともに歩んできています。
わかりやすいところだと、レコーディング時のドラムやベースが生演奏から打ち込みに変わりました。バンド系の曲だと、実際にドラマーに叩いてもらう曲もありますが、それは楽曲制作における選択肢のひとつという考えです。
打ち込みのドラムでも出来上がりだけ見ると、生ドラムとクオリティーに遜色はなく、生ドラムのほうが絶対によいという訳ではありません。
寂しい話ですが、近年はレコーディングに昔ほどの予算があまりつかないので、納得せざる得ない理由もあります。
話が少し逸れましたが、そのため、音楽で生きている人間は「AIもツールとして使えばよいじゃん」「まだ大丈夫だろう?」みたいな感じだったのですが、それが甘い考えであることが、ここ数ヶ月で認識されはじめて来ています。
AI Musicというジャンルがスタンダードになりそう
新たな音楽ジャンルとして「AI Music」という言葉がスタンダードになることも想定できますが、テクノロジーの進化と歩んできたクリエイターである以上、AIの排除というのはあり得ないというより、あってはならない話です。
このサイトでも、AIの力と人間の感性を融合させる「楽曲制作 & 配信プロジェクト」を立ち上げてスタートさせましたが、YouTubeから今回提示された「AI Music Principles」と方向性は同じだと感じます。
現段階ではプロジェクトでAIを使用しているのはボーカルだけですが、ケースバイケースでボーカル以外にもAIを取り入れてゆく予定です。
しかし、YouTubeというより、GoogleがAI時代を先導する最有力候補のひとつであることを疑う余地はありません。
YouTubeから提示された「AI Music Principles」は、GoogleがAI時代も先導するという強い意思表示にも見えました。
記事公開日:2023年08月25日 by KSTY